一寸先に進もうとするより、ぐっと後ろに下がりじっくり大局を見る
定本「老子道徳経」の読み方 早島天來編より 人生を最高に生きる老子の言葉 第二十八回
★1歩ゆずる勇気を持とう
今月は第六十九章「頑張って一寸先に進もうとするより、あえて一尺後ろにさがって譲る」無為の生き方です。この章は「兵を用いるに言有り」ではじまり、兵法について書かれた章ですが、老子の兵法はすなわち、人生をいかに楽しく生きるかという人生哲学に直結しています。
私達の多くは、先へ進もう進もうと努力することは出来るが、人が一生懸命先に進んでいるときに、1歩下がって道を譲り、じっくりと大局を見ることが不得意かもしれません。学校では、常に人より先んじる人が偉いと教えられ、それを信じて走り続けてきたような気がします。ですが本当にそうなのでしょうか? 老子はこう教えているのです。1歩先に行くより、ぐっと後ろに下がってじっくり大局を見なさい、そうすればむやみに争う必要もなく、楽しく余裕を持って生きることが出来るのです、と。
★主とならず客となれ
なるほど、これは混み合った駅での歩き方にも通じます。皆が出口に向かって殺到している時に落ち着いて先を急がず、人と人の切れ間を見て歩けば、ぶつかることなく思いのほか早く外に出られるものです。先を争う対立の気で進路を邪魔されたり、互いに身体がぶつかって前に進めないことはよく有ることです。
人生も同じです。どうしても自分が主となろうとして意見を主張すると対立の気を生みますし、また相手の話をよく聞けば、対立が生まれず会議がスムーズに進み、結局自分の意見が通ったという経験を皆さんもお持ちなのではないでしょうか。これは家庭内でも同じですね。夫婦も親子も、互いに相手に譲る気持ちを持つことで、陰陽調和の和やかな家庭の気が保たれるのです。
必ず自分が先に行こうとしないで、1歩退く勇気を持つことを実践してみることで、これまでの前向きな頑張りの人生に更に余裕が備わって、家庭も仕事も晩年も楽しい本当の豊かな世界が見えてくるのではないでしょうか。
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